自治体におけるこども達の健康情報の一元管理

―産官学共同研究で特許取得―

自治体におけるこども達の健康情報の一元管理

発表日時 皇冠体育,皇冠比分6年3月21日(木) 10時30分~11時15分
場所 生涯研修センター研修室
発表者

本学医学部(健康管理センター) 准教授 北野尚美
株式会社ユニオンシンク 常務取締役 玉置壽一

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1.本件のポイント
  • データヘルス時代の母子保健情報の利活用に係る情報システム改修事業(2019年度)で、自治体では母子保健情報のデジタル化が進み、自治体間情報連携やマイナポータルでの閲覧が可能となった。
  • 国民の健康づくりに向けたPHR*1の推進に関する検討会(2019年9月)で、文部科学省は学校のICT環境整備目標の一環として統合型校務支援システム(保健系を有する)の普及に言及、統合型校務支援システム整備率は81%(2022年3月)まで上昇した。一方で、学校健診のデジタル化のためのプロセスなど詳細は自治体や学校現場で異なり、デジタル化された学校健診情報の利活用は進んでいない。
  • 和歌山県で市町村からのニーズを受けて、妊娠期からのこども達の健康情報を一元管理する仕組みを開発し、2018年度から社会実装に向けた課題抽出と解決のための実証的研究を実施している。
  • 役所庁舎内で、母子保健情報(妊娠届時保健師面接、妊婦健診、出生、乳幼児健診、就学に向けた発育発達に関する健診等)と学校保健情報(学童?生徒の健康診断とその関連情報)を切れ目なく一元管理する方法論について部署間協議と実証実験を積み重ね、仕組みの実現可能性を検証した。
  • 社学連携で開発したこの仕組みは、こども達に、自らの胎児期から義務教育修了までの健康状態の前向き観察記録を活用する権利を保障する。自治体は、蓄積した既存の健康情報を横断的?縦断的な集計?分析に活用し、健康データを可視化してエビデンスに基づく政策立案(EBPM)に役立てる。
2.本件の背景

 人生百年時代にあって、健康寿命延伸やウェルビーイングの観点から、早期からの生活習慣や健康に関心が高まっている。生活習慣病予防の研究面でも、DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)学説など、妊娠(胎児)期から生後早期の環境への注目が集まっている。厚生労働科学研究では、身体的?精神的?社会的(biopsychosocial)に健やかな子どもの発育を促すための切れ目のない保健?医療体制提供のための研究(研究代表者:岡 明)など思春期の保健?医療体制の基盤づくりの実証が行われてきた。近年、厚生労働省は、プレコンセプションケア*2に関する体制整備を進めている。
 今や、こども達にとって、PHRを将来の健康管理に役立てることは、生きる力の1つの要素である。従って、全国津々浦々の自治体では、様々に異なる地域特性を活かしつつ、こども達の人生の重要な時期の健康を衛るインフラである母子保健や学校保健の事業の質保証がこれまで以上に求められる。
 健康情報のデジタル化については、本人が健康情報にアクセスして活用する個別化の考え方(PHR)と、地域住民の健康状態や関連要因を集団として分析するなど公衆衛生の視点(EBPM)の双方から、バランスよく持続性のある仕組みが求められている。
 そこで、社学連携で、妊娠期から乳幼児期、そして就学前、さらに小中学校卒業まで15年間に渡ってこども達の健診情報を切れ目なく管理し、利活用を可能とするための仕組み開発に取り組んだ。

3.本件の内容

 本研究で開発した仕組みを示す(下図)。本研究は、和歌山県有田郡湯浅町並びに湯浅町教育委員会と和歌山県立医科大学が「学童?生徒の健康に関わる情報の縦断的データベース構築に関する研究協定」を締結して実施したもので、具体的なシステム開発等は株式会社ユニオンシンクが産学共同で実施した。

イメージ図

(本資料に掲載する著作物の複製権?上映権?譲渡権?公衆送信権(送信可能化権を含む)は、公立大学法人和歌山県立医科大学と株式会社ユニオンシンクが保有します。無断で複製する行為(コピー、スキャン、デジタルデータ化など)は、著作権法上での限られた例外を除き禁じられています。)

4.期待される効果と今後の展開

 開発した仕組みによって、これまで就学を境に途切れていたこどもの発育発達の軌跡がリアルタイムで可視化でき、結果として胎児期から義務教育修了まで連続観察が可能となる。とりわけ、思春期までのこどもの生活は地域に密着していることから、それぞれの地域で、個々の子どもの健康状態とともに、集団特性をリアルタイムで把握し可視化して、早期介入策の検討に役立つことが期待できる。
 仕組みとともに開発したシステムは全国の乳幼児健診や学校健診に対応できる汎用性があるもので、今後は全国の都道府県でこの仕組みの普及と実装研究を行い、こどもの健康状態の向上に寄与したい。

5.本件の特許に関する情報公開

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)  https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-064870/11/ja

特許名称:画像情報認識装置、画像情報記憶媒体構築方法、画像情報認識方法、及びそのためのコンピュータプログラム、及び保健情報管理方法

発明者:北野尚美、玉置壽一

出願人:公立大学法人和歌山県立医科大学、株式会社ユニオンシンク

出願番号:特願2021-167768 出願日:皇冠体育,皇冠比分3年10月13日

公開番号:特開2022-064870 公開日:皇冠体育,皇冠比分4年4月26日

特許査定日:皇冠体育,皇冠比分5年12月12日

6.略語?用語

*1 PHR:パーソナルヘルスレコード
*2 プレコンセプションケア:成育医療等基本方針では、「女性やカップルを対象として、将来の妊娠のための健康管理を促す取組」と定義。

【謝辞】

 本研究に協力を得ました和歌山県内の市町村の関係部署と担当の皆様のご尽力に心より感謝申し上げます。和歌山県立医科大学の平成30年度特定研究助成プロジェクト(18TS01)と、皇冠体育,皇冠比分元年度特定研究助成プロジェクト(19TS05)の助成を得て実証的研究に着手できましたことに感謝します。
 また、本件特許出願においては、特許庁から本学に派遣された「知財戦略デザイナー」の先生方、本件出願をご担当いただいた京阪奈知的財産事務所米田匡良先生にもご尽力を賜りました。重ねて感謝申し上げます。

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